松永天馬×広瀬犬山猫 第1回

2013年12月22日 00:00
 
2013年12月某日 都内某所にて 対談は行われました。
 
既にご存知の読者諸賢もいらっしゃるかと思いますが
初めに対談相手である松永天馬氏と、僭越ながら私、広瀬犬山猫の紹介をさせていただきます。
 
松永天馬 1982年 東京生まれ
※画像はイメージです (C)Nintendo
トラウマテクノポップバンド「アーバンギャルド」のリーダー。
作詞・作曲・ボーカルの他、バンド全体のプロデュースを手がける。
ポップでありながら病的、キャッチーな世界観と個性的なパフォーマンスで
多くのファン(アーバンギャル/アーバンギャルソン)を獲得し、2011年に「スカート革命」でメジャーデビュー。
アルバムがオリコンデイリーチャートにベスト10入りしたり、
今はなきSHIBUYA-AXをワンマンで満員にしたり、ジャパンエキスポに呼ばれたり
21世紀の邦楽シーンに異様な旋風を巻き起こしている。
ゲームに関しては素人。
(公式サイト:http://urbangarde.net/
 
 
広瀬犬山猫 1982年 群馬県生まれ
※画像はイメージです (C)Nintendo
フリーゲーム「ソーサリーペドファイル」作者。
150本以上のRPGをクリアしてきたRPGが好きすぎて死ねる男。
本業でも青いロゴの某開発会社のプランナー、ゲーム業界7年目。自称156cmのエインフェリア。
趣味的な活動で詩・短歌・俳句などの執筆や朗読を行っている。
2001年に行われた「詩のボクシング群馬大会」の出場時、松永天馬に出会い衝撃を受ける
以後、朗読ライブで共演や、文系トークな飲み会等ちょっとした親交を持つ。
最古参のアーバンギャルソンでもあり、初期のデモテープを聞いたことはちょっとした自慢。
個人制作した「ソーサリーペドファイル」のエンディングテーマに「四月戦争」を使用したいと直々に熱烈申請した。
音楽に関しては素人。
 
※以下、ゲーム「ソーサリーペドファイル」のネタバレ情報が一部あります。
 クリアしてない方はご注意ください。(核心部分は伏せています)
 
 
広瀬犬山猫(以下犬山猫)
この度は、「ソーサリーペドファイル(以下ソサペド)のエンディングテーマに
「四月戦争」を使わせていただき、ありがとうございました!
曲のお陰で、すごく良いエンディングにできたと自負してます。
 
松永天馬(以下天馬)
いえいえ、曲を褒めてもらってありがたいです。
しかしまた「四月戦争」とはすごく懐かしいね。2008年だからもう5年前か。
 
※「四月戦争」はアルバム「少女は二度死ぬ」のエンディングを飾る一曲。
 突き抜けるピアノのメロディとスーサイダルな恋の歌詞が心地よい。
 
 
犬山猫:
このゲームを作ってる最中、
主人公やヒロインが命を懸けて恋を全うするようなシーンがあってね
作れば作るほど、「四月戦争」が使いたくなってしまって。
使用許可が正式に下りる前から、歌詞になぞらえて
の咲いてるシーンとか「君が好きだ」って告白するシーンとか
他にも「ニュース」とか「赤紙」とか「日の丸」とか、色んな単語をね……
キャラクターの多くを東京にゆかりのある人間にしたり……
 
恋に落ちて 命落とした瞬間に 桜の花になって
 
天馬:
本当に「四月戦争」が好きなんだね(笑)
元曲が多いことでアーバンギャルドは有名なんだけど
この曲も元曲があって、カヒミ・カリィ「One Thousand 20th Century Chairs」
イメージして作ってたんだよ。
 
 
犬山猫:
おお、これはカッコイイ!オサレ!
確かに雰囲気が似てる。
ドラムとピアノが激しくて、ウィスパーボイスが乗ってる……
 
天馬:
そう、メロディーが激しめの曲なのにウィスパーボイスの曲って少ないから
アーバンギャルドでも、そういう表現をやりたいと昔から思ってて
「恋をしに行く」なんかも、その1つだね。
活動し始めの頃ははPA(音響機材)にも限界があって、
ライブで曲の音量バランスを再現するのがすごく大変だったな。
今はもうできるようになったけど。
 
※「恋をしに行く」「私は都市を抱きしめていたい」など
 最初期のアーバンギャルドのタイトルは坂口安吾からの引用が印象的だ。
 
 
犬山猫:
歌詞については、どんなエピソードが?
 
天馬:
元々は、歌詞じゃなくて朗読のために書いた詩だったのが
ちょっとした事情でお蔵入りになって、歌詞に再編されたという
全編メタファ(比喩)の塊だね。
 
犬山猫:
以前、読んだ曲の解説で「ロシアフォルマリズム」とか
「ユーリー・オレーシャ」とか難しいことが書いてあったけど……
ユーリー・オレーシャとか全然知らなかった。文系なのに!国語科なのに!
 
天馬:
四月戦争の詩を書いていた時期は、
早稲田でロシア文学を研究してたからその影響が強く出てるね。
ユーリー・オレーシャは20世紀の作家だけど
ロシア文学を専攻しない限り、普通は聞かない名前だと思う。
一般にロシア文学の作家と言えば、有名なのはドストエフスキーとか19世紀ばかりだよね。
 
犬山猫:
トルストイとか、チェーホフとか?
「ロリータ」を書いたナボコフならユーリー・オレーシャと同い年だったよ。
ロリコン「ソサペド」でも重要なテーマだから、意外な繋がりに縁を感じたね。
(ともに1899年生まれ)
 
天馬:
へえ、そうだったんだ!
ナボコフはロシア生まれでも、亡命してるよね?
 
犬山猫:
うん、アメリカに。「ロリータ」しか読んだことないけど、
「ロ・リー・タ。舌の先が口蓋を三歩下がって、三歩めにそっと歯を叩く。ロ。リー。タ。…」とか
あらすじだと酷い物語なのに、美しい文章だったと思う。
僕は谷崎潤一郎とか耽美も好きだから、ちょっと心に残ったな。
 
※ナボコフの著した「ロリータ」は「ロリータ・コンプレックス」の語源となった。
 主人公はペドファイル(小児性愛者)の男である。
 
天馬:
確かに。僕も「ロリータ」しか読んでないけど、美文だったね。
 
犬山猫:
それで……「フォルマリズム」も知らなかったから調べたけど、
小説を研究批評する際に、物語の舞台や内容のことは触れずに
使われている比喩とかリリックといった技術的な構造の面からアプローチする、みたいな……
比喩を駆使して、非日常的な言い回しにするのが「異化」
日常の話し言葉のように、意味がスッとはいってくる平易な言葉は「自動化」されてるって言うとか……?
 
天馬:
そう、異化作用
「ロシアフォルマリズム」っていうのは実際にロシアであった文学の批評運動だね。
 
こうした膨大な文学知識に裏付けられた構造主義が
アーバンギャルドの歌詞の魅力の一つなのかもしれない。
 
犬山猫:
例えば出だしからして「君の裸を見てから、死ね」とか
ひねられた表現であるけれど。
 
天馬:
諺でも「ナポリを見てから死ね」ってのがあって
普通の(自動化された)言い方をするならば
「ナポリを見るまでは死ねない」
「君の裸を見る前に死ぬわけにはいかない」って意味になる。
 
犬山猫:
「死ぬ」と言えば、アルバムタイトルにもなってる
「少女は二度死ぬ」ってのは、どんな由来が?
 
※「少女は二度死ぬ」は2008年に発売されたアーバンギャルド初のフルアルバム。
 翌年の2009年には全国流通するまでにその地位を高めた。
 
天馬:
これは慣用表現的なもので「007は二度死ぬ」に着想を得てます。
原題は「人は二度しか生きることはない……」っていうものなんだけど。
 
ところで、クライマックスの
「君のこと好きすぎて 君になってしまいそう」って部分はどう思う?
犬山猫くんは「好きな人になりたい」って思う?
 
犬山猫:
僕は結構共感できるなぁ。
前に身を乗り出すくらいに好きな彼女がいたんだけども
いつも一緒に居られるわけじゃないし、それでもやっぱり好きで
そのあまりに、好きな人そのものになりたいって……一瞬だけ思ったけど。
(何だろ、ATフィールドが崩壊するような感じなのかな?)
 
天馬:
女装とかの願望も、好きな女性になりたいってのが根底にあったりするのかな?
 
犬山猫:
僕の場合、極端にユニセクシャルな恰好や化粧等に傾倒した時期が
過去にあったけど、あの時は好きな女性になりたいというよりも
低身長「可愛い自分でありたい」というコンプレックスの現れだったと思う。
今の僕は、年相応かちょっと下程度に、身の丈に合った可愛さで充分です(笑)
 
天馬:
なるほど……
どうもAKB48の男性のファンの一部で、推しメンの顔に似せて整形するってのが
流行ってるらしいんだけど、それは一体どういう心境なんだろうね?
 
犬山猫:
えええ!?男で?そんな人いるの?
鏡を見ながら、オ●ニーでもしたいのかな……?
そういうのだったら、正直気持ち悪いな。
 
あと、僕が気になる比喩としては
「空襲のリビドーに火をつけろ スカートにゼロ戦飛ばせ
 ショーツの白旗から 日の丸に変えてみせる」
……って、これは……破瓜、すなわち処女喪失って解釈でいいの?
 
天馬:
まさにそうだね!
 
犬山猫:
やっぱり!
処女喪失ってのも、少女が迎える「死」の1つなんだろうなあ。
 
 
ほんの一瞬だが、アーバンギャルドのアートワークを意識した演出も、ねじ込まれているのだ!
 
 
  ※以下、犬山猫による補足(というかひとりごと)
 
「ソーサリーペドファイル」に登場する
謎の少女・リーナ
物語の中で、複数回の死や自らの喪失を迎える。
魔力喪失が貞操の喪失≒少女の終わりを意味する世界の中、
愛と命のやりとりに翻弄されるリーナ。
まさに「四月戦争」の世界観にもマッチしたものであった。
 
全ての戦いを終えた後
ゲームの世界と現実の世界とのかけ橋として、
現代の都市音楽であるアーバンギャルドの楽曲を据えたいと思ったのだ。
それを実現できたことを、非常に満足している。
 
 
第1回 -今明かされる「四月戦争」の秘密。幻夢(GAME)の中でも少女は二度死ぬ-
 -了-
 
※この記事は、松永天馬氏との対談を元に読み物として再構成したものです。 
全面的な文責は当サイト管理人・広瀬犬山猫にあります。
 
 
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